おとなな弦楽譜面も描けるアーティスト、KAN。
弦楽四重奏でのセルフカバーアルバム2作を含めた
2020年までの活躍を振りかぶってみよう。
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G1 la RINASCENTE おすすめ度 ★★★★★
その少し前からオーケストラ譜面アレンジで
コンサートを行ったり、聴きたかったな~と思っていたら
それに応えるように2017年3月にリリースの
弦楽四重奏に歌ピアノの構成のアルバム。
タイトルはフランス語で「再生、生まれ変わり」。
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冒頭、歌なしのオリジナル弦楽四重奏曲だ。
メロディアスな三連で輪舞曲な感じがすごくよい。
短編のショートフィルムのバックに重ねるといい雰囲気になるだろう。
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「世界でいちばん好きな人」「愛は勝つ」「まゆみ」といった
定番曲の弦楽アレンジに加えて
「CLOSE TO ME」「いつもまじめに君のこと」「星屑の帰り道」など、
もともと弦がきれいな曲もセレクトされた。
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もともとクラシカルな「キリギリス」も想定内だが、
注目すべきは「彼女はきっとまた」の選曲で
まさに生まれ変わった楽曲が堪能できる。
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なお、アルバムジャケットは
ドナルド・フェイゲンの「The Nightfly」のパロディ。
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G2 la RiSCOPERTA おすすめ度 ★★★★★
2018年10月に2年続けてリリースの
弦楽四重奏+ピアノ+歌のアルバム第2弾。
タイトルはイタリア語で「再発見」。
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冒頭やはり、歌なしの書き下ろしの弦楽四重奏曲。
こちらはバッハの宗教曲を思わせるような展開で、
ちょうど合唱曲のような入り組をしていて格好いい。
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その他の選曲は第一作とまったく被らない。
「カレーライス」「50年後も」「永遠」「今年もこうして二人でクリスマスを祝う」など
弾き語りの一作目の選曲が並ぶ。
そこに「Happy time happy song」「サンクト・ペテルブルグ」「君はうるさい」といった
ポップな名曲が選曲され、弦楽四重奏として生まれ変わる。
そこはまさしく再発見。
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ちなみにジャケット画はKAN自らの
色鉛筆での作品であり、多才さを見せつける。
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17 23歳 おすすめ度 ★★★★★
2020年2月にシングル「ポップミュージック」をリリース。
カップリングは 弦楽四重奏版「KANのChristmas Song」。
踊る58歳に世間を驚愕させたミュージックビデオはyoutubeで見れる。
これを経て11月に発売されたまたしても数字タイトルアルバム。
これまたバラエティと話題性を両立させた秀作だ。
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ビートルズ色満載な「る~る~る~」で軽快に幕開け。
歌詞の「まっしろ」は基本「まっちろ」で歌うなど
随所にこだわりが見える。
タイトル曲「23歳」はまたしても半生を綴ったもので、
おとなのポップに乗せるAORナンバーだ。
サビのメロディは2回目では転調しており、
耳にも楽しく、ピアノも効果的に使われる。
MANの「8 days a week」に近いものを感じるナンバーだ。
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続く「ふたり」は8ビートナンバーだが、
メロディは終始同じリズムで繰り返される前衛的な曲。
それでいて実験的にならず涙腺に訴えてくる。
最後に狙いすましたように2拍置くところもいい。
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トライセラトプスとコラボしたご時世ロック
「君のマスクをはずしたい」も
一部のSNSでKANファン以外でも話題になった。
当たり前のように歌詞に台詞を入れたり、
最後のカナリボクツライを入れてくる辺りは職人芸だ。
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今度は秦基博とコラボした「キセキ」は
歌詞カードを見ると作曲KAN+となっていて、
共作なのかと匂わせておいて、
後に秦基博の「カサナル」と重ねて楽曲として成立する、という
離れ業と「謝罪会見」をやってのけた。
本当に音楽をエンジョイしている姿勢に心から敬服だ。
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最近の定番のPerfumeテクノ「メモトキレナガール」を経て、
今度は急逝してしまったヨースケ@HOMEとの合作「コタツ」。
哀悼としての収録でもしんみりとはさせないところがにくい。
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「ほっぺたにオリオン」は過去のどの楽曲とも異なる新ジャンル。
シングル「ポップミュージック」は
聴けば聴くほど癖になるサビと、
エンディングのアレンジがかっこいい。
アイドルカバー版もある。
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本編ラストの「エキストラ」は女性目線の歌詞の弾き語り曲。
動画サイトでは何人かの女性歌手がカバーしており
どれもすごく雰囲気がよい。
Bメロ後半部分のメロディ進行は
「安息」のサビ後半のメロディ同様、
KANならではの展開で印象深い。
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ああ、またなんてすごいアルバムを
作ってしまったんだ、と言う他なし。
曲のジャンル、バラエティが凄すぎるよ。
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おすすめ楽曲を敢えて3曲挙げるなら...
10 エキストラ
05 キセキ
02 23歳
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