「愛は勝つ」以外は残念ながら広く知られているとは言えないが、
おとなな音楽の楽しみ方を実践し続けてくれるKAN。
まあ、スタレビとくればKANでしょう、ということで
今回はKANのデビューからまだ間もない期間の作品を振りかぶってみよう。
(2023/12/1 更新)
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01 テレビの中に おすすめ度 ★★★★☆
☆は「敢えて3曲挙げるなら」選曲
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1987年4月25日、同タイトルのデビューシングルと同時リリースでデビュー。
おもちゃのピアノを弾きながらのジャケットで
当初からピアノマンであることを意識させている。
アマチュアバンド時代の100曲くらいの中のベスト作品集であると
後にコメントしており、
バラエティに富んだ10曲入りだ。
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アルバムは陽気なダンスナンバー「SPUNKY DANCE」で幕を開ける。
快活な、陽気な、という意味の単語で
ファンクラブの名前も当初はSPUNKY CLUBだったことは
後から考えると少しニヤニヤしてしまう。
ライブで出だしの歌詞をわざと間違ったりするお遊びもさることながら、
後に「Decimo」で見せるピアノ弾きかたりアレンジが特に秀逸。
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2曲目は代名詞とも言えるエレピのイントロで始まる「セルロイドシティも日が暮れて」
出だしの2曲で現在にも通ずる、こんな音楽をやってます、
という自己紹介な感じで展開する。
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中学の頃、どうやっても地図帳でセルロイドシティを見つけられなかったが
どうやら地名ではないようでもある
合成樹脂の街、ということなのか?
正直、今もよくわからない。
歌詞の最後がオムニバス、というのも。
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曲はアルバムに1曲必ず入る超ビリー・ジョエルものの元祖である。
中盤のどんどんくる転調も今に通ずる
初期の人気曲のひとつだ。
デビューシングル「テレビの中に」のカップリングでもある。
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タイトル曲「テレビの中に」はイケイケのロケンロールスタイルをも魅せる一方、
マイケル・ジャクソン風のフェイクも聞かせ、
最初の3曲でその音楽性の多様性から早くも聞く者の度肝を抜く。
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少し浪漫飛行な「ARE YOU READY TO BE」と
ちょっとだけC-C-Bな「悲しきGRADUATION」と
この時代ならではの2曲を挟んで
デビューのきっかけとなった「TOP SECRET」では
やはりピアノの醍醐味を同音連打で聞かせる。
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「恋するDISCOMAN」に続く「GOOD NIGHT」は
流麗なメロディが心地よく、
最近の弾き語りバージョンではそれを再認識させる。
勢いのある「FAIRY TALE」も後半にピッタリな佳曲である。
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最後を飾る「MEMORIES OF FUTURE」は、
サビのメロディラインが素晴らしく
大サビへの展開も含めて完成度の高い楽曲だ。
惜しむらくはイントロ。
少しずつ音を重ねる凝ったイントロを目指しすぎて
もう少し直球でよかったのに、と思ってしまう。
例えば、おすすめ曲として紹介しても
試聴できるのは最初のパーカッション部だけかも知れない。
いつかピアノ一本の弾き語りで披露して頂きたいところだが
それも含めて「MEMORIES OF FUTURE」なのかも知れない。
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オススメ楽曲を敢えて3曲挙げるなら…
10 MEMORIES OF FUTURE
08 GOOD NIGHT
02 セルロイドシティも日が暮れて
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02 NO-NO-YESMAN おすすめ度 ★★★★☆
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デビュー作からわずか半年、1987年10月にリリースの2作目。
KANがどんな音楽をするかをざっくり示した前作とは一変、
紫色のカフェバーチックな作品が並ぶおとなな作品になっている。
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1曲目は「今夜はかえさないよ」。
タイトルとは裏腹な、ポップとはこういうものだ、と
主張せんばかりの爽やかポップなアレンジで、
今後のKANの方向性を表している。
逆の意味で本作の中では異色な雰囲気の楽曲だ。
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2曲目から本作独特の雰囲気に染まっていく。
「僕は泣く」はメロディラインを楽譜に書くと
非常にに難しく感じそうな16部音符のシンコペーションだらけの曲で
後半のアドリブっぽいスキャットも自在に跳ねる。
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ボサノヴァの「STYLISTIC」もオシャレにまとめられており、
「君を想う夜」はこのアルバムの中では比較的その後のライブでも演奏されているが
やはりカフェバーな雰囲気を保ち続ける。
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「SILENT SIREN」は中学生当時、サビが2つある不思議な曲に感じたとともに
そこまで強調して表現する「オフェリア」とは何か?
中学の時もわからなかったが今もわからない。
メロディアスな楽曲でこのあたりまでは
アルバムは紫色で染められていると言ってよい。
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後半の1曲目「ONE NIGHT KISS」は一転して明るいポップ路線の佳曲。
弾むようなサビ部分に英語詞がきれいにのっかり
シングルとしてもうまくやれば売れ線だったのでは? と思わせる。
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実際のシングル「BRACKET」は再びアルバムの色合いに合った紫なイメージ。
本作の中でピアノが目立つ最初の曲であり
ライブでの演奏も格好よく、やってくれるとすごく得した気分になる楽曲。
郷ひろみチックな歌詞もこれはこれで印象的。
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続くのはタイトル曲「NO-NO-YESMAN」。
これほど勢いのある楽器音が聞こえる前奏の曲も珍しい。
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ライブではしばらくの間、ポイント曲として披露されていた。
タイトルの意味が中学生時分にはよくわからなかったが
たぶんこんな男性のことだろう。
「あら、これ素敵!、ねえ、買ってよ」
「えー、でも、似たようなやつ持ってない?」
「ううん、これはここのところが気に入ったの」
「他の店で、もっといいのが売ってるかも...」
「もうすぐ誕生日だからさぁ...」
「うーん、じゃあ、買おうか」
...失敬。
今後のKANの詞に出てくる男性像を暗示しているとも言える。
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続く「ALL I KNOW」は本作で個人的にイチオシの曲で、
後の「君がいなくなった」のような8ビートバラードだが、
サビのメロディ展開の妙にハマる。
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平松愛理の「思い出の坂道」の前奏部分ともリンクする。
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最後の転調後に弦楽器だけになる部分も秀逸だ。
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この曲で締めるかと思わせといて、
最後は「BRACKET」のカップリングの「僕のGENUINE KISS」でジャジーにスウィングして幕を閉じる。
この曲もDecimoライブバージョンが格好いい。
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その後のKANからすると異色のアルバムだが、
一曲一曲の質は高く、サウンドも聞き心地よく
BGMとしても聞きやすい作品集だ。
スタレビの「NIGHT SONGS」的なタイトルでもはまるかもしれない。
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オススメ楽曲を敢えて3曲挙げるなら…
09 ALL I KNOW
07 BRACKET
06 ONE NIGHT KISS
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KANあれこれプレイリスト
【1987-2022】KANのド定番曲集と究極の隠れた名曲集 - おとなの自由研究
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KANの隠れた名曲バックナンバー
愛は勝つ以前のKANの隠れた名曲4曲。 - おとなの自由研究
愛は勝つ頃のKANの愛は勝つ以外の名曲たち - おとなの自由研究
KANの90年代中盤の埋もれた名曲5曲 - おとなの自由研究
フランス留学前後のKANの隠れた名曲7曲 - おとなの自由研究
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KAN全アルバムレビュー
KAN を集める ① ~愛は勝つのずっと前 - おとなの自由研究
KAN を集める ② ~東京ライフと言えずのI LOVE YOU - おとなの自由研究
KAN を集める ③ ~愛は勝つを含む - おとなの自由研究
KAN を集める ④ ~まゆみとクリスマスソング - おとなの自由研究
KAN を集める ⑤ ~すべての悲しみにさよならするために - おとなの自由研究
KAN を集める ⑦ ~愛は勝つの Songwriter - おとなの自由研究
KAN を集める ⑧ ~KREMLINMANで愛は勝つイメージ一掃? - おとなの自由研究
KAN を集める ⑨ ~情緒ある小羊へ - おとなの自由研究
KAN を集める⑩ ~世界でいちばん好きなカレーライス - おとなの自由研究
KANを集める⑪ ~弾き語りばったりのIDEA - おとなの自由研究
KANを集める⑫ ~よければ一緒にカンチガイ - おとなの自由研究
弾き語りは寝てる間の安息のscene~KANを集める⑬ - おとなの自由研究
弦楽四重奏でエキストラがカサナルキセキ~KANを集める⑭ - おとなの自由研究
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